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給与計算「減給の制裁、割増賃金単価はどうする?」(No.219)2019.4.26

皆様こんにちは!
社会保険労務士法人「ことのは」
中小企業診断士の山下典明です。


  • 減給額は割増賃金の基礎となる賃金へは含めない
  • 減給以外に損害賠償請求という方法もある。

世の中では不祥事が発覚した際など、「〇〇ヶ月の間、報酬〇〇%カット」、よく見かけるのはいかがなものかと思いつつも、よく見かけますね。だから、何となく、この手の懲戒処分はノーマルだとの認識が広まっていると思います。

しかし、労働基準法では、従業員に対する大胆な給与カットはご法度です。


  • 平均賃金の1日分の半額以下
  • 一賃金支払期の賃金総額の10分の1以下

そして

  • 事案1つに対して減給の制裁は1回

根拠:労働基準法 第91条(制裁規定の制限)
 e-Gov(労働基準法)


このように、世の中の一般感覚とは異なる内容となります。これを無視、世の中の一般感覚で処分してしまうと、それは労基法違反ということになります。後日、労働者から訴えられた場合は、過分に減額徴収した分について、後日支払う義務が生じること必至です。

さて、上記ルールを踏まえた上で、減給の制裁を実施したとします。

その前にまずは給与設定と減給額です。


  • 設定)

通常:基本給「300,000円」・・・①
減給:基本給「295,000円」・・・②

5,000円の減給はOK?
平均賃金:①×3カ月÷91日=9,890円
これの半分なので・・・過分減給ですね。

訂正します。

通常:基本給「300,000円」・・・①
減給:基本給「296,000円」・・・③

平均賃金「9,890円」なので4,000円の減給はOK!

余談ですが、、、世の中の一般感覚からすれば、「4,000円」の減給で済むというのは、金額だけでいうならば2~3時間遅刻するのと大差ないですね。よって、これに納得できない事業主様が多いのも頷けます。


さて、今回の本題です。

時間外単価を算出する際、基礎となる賃金は「①」なのか?「③」なのか?

答えは冒頭に記したとおりです。

  • 減給額は割増賃金の基礎となる賃金へは含めない

よって、「①」、「300,000円」のままが正解となります。

  • なぜなのか?

東京および神奈川の労働基準監督署に、確認をとりました。理由としては、、、

減給額を割増賃金の基礎に含めた場合、①減給の制裁だけでなく、②割増賃金においても減給が適用されることとなり、二重罰となるため。

前述のとおり、減給の制裁は、案件1 つに対して1回が法律で定められています。仮に減給額を割増賃金の基礎に含めてしまい、残業計算をしてしまった場合、二重罰となりますので、これについて抵触しそうですね。労使双方が違反をするという状況が生まれてしまいます。

給与計算業務を担当なさっている方は、(レアケースかとは思いますが)ご注意ください。


  • 不祥事事案の重大さを考慮した減給をできないのか?

このようにお考えになるのはごもっともです。例えば、従業員の不注意により社用車を全損した、顧客情報を大量に流出した、といったように会社に多大な損害を与えた場合です。どうすればよいのか?

  • 減給以外に損害賠償請求という方法もある。

なお「損害賠償」として回収する場合は、、、

  • 給与からは天引きしない
  • 給与全額支払い後に指定振込先へ入金してもらう

といった手段をとることをおススメいたします。

  • 振込がなかったらどうするのか?

身元保証人へ連絡する、それでもダメなら専門家(弁護士)へ相談し、場合(額)によっては裁判を起こすことになります。

なお、損害賠償請求をするにしても、従業員に全額負担させるのは難しいでしょう。なぜならば、事故が生じる原因が100%本人にあるのかが分からないためです。会社は教育を施していたのか時間管理を徹底して健康面に配慮していたのか?裁判に発展した場合には、このあたりにも焦点があたり、チェックされることになります。

・・・なにか重い話になってまいりましたが、このようなことが生じないよう、日々の労務管理・教育訓練は怠らないようにしたいところですね。

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中小企業診断士 山下典明


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