皆様こんにちは!
社会保険労務士法人「ことのは」
中小企業診断士の山下典明です。
- 減給額は割増賃金の基礎となる賃金へは含めない!
- 減給以外に損害賠償請求という方法もある。
世の中では不祥事が発覚した際など、「〇〇ヶ月の間、報酬〇〇%カット」、よく見かけるのはいかがなものかと思いつつも、よく見かけますね。だから、何となく、この手の懲戒処分はノーマルだとの認識が広まっていると思います。
しかし、労働基準法では、従業員に対する大胆な給与カットはご法度です。
- 平均賃金の1日分の半額以下
- 一賃金支払期の賃金総額の10分の1以下
そして
- 事案1つに対して減給の制裁は1回
根拠:労働基準法 第91条(制裁規定の制限)
⇒ e-Gov(労働基準法)
このように、世の中の一般感覚とは異なる内容となります。これを無視、世の中の一般感覚で処分してしまうと、それは労基法違反ということになります。後日、労働者から訴えられた場合は、過分に減額、徴収した分について、後日支払う義務が生じること必至です。
さて、上記ルールを踏まえた上で、減給の制裁を実施したとします。
その前にまずは給与設定と減給額です。
- 設定)
通常:基本給「300,000円」・・・①
減給:基本給「295,000円」・・・②
5,000円の減給はOK?
平均賃金:①×3カ月÷91日=9,890円
これの半分なので・・・過分な減給ですね。
訂正します。
通常:基本給「300,000円」・・・①
減給:基本給「296,000円」・・・③
平均賃金「9,890円」なので4,000円の減給はOK!
余談ですが、、、世の中の一般感覚からすれば、「4,000円」の減給で済むというのは、金額だけでいうならば2~3時間遅刻するのと大差ないですね。よって、これに納得できない事業主様が多いのも頷けます。
さて、今回の本題です。
時間外単価を算出する際、基礎となる賃金は「①」なのか?「③」なのか?
答えは冒頭に記したとおりです。
- 減給額は割増賃金の基礎となる賃金へは含めない!
よって、「①」、「300,000円」のままが正解となります。
- なぜなのか?
東京および神奈川の労働基準監督署に、確認をとりました。理由としては、、、
減給額を割増賃金の基礎に含めた場合、①減給の制裁だけでなく、②割増賃金においても減給が適用されることとなり、二重罰となるため。 |
前述のとおり、減給の制裁は、案件1 つに対して1回が法律で定められています。仮に減給額を割増賃金の基礎に含めてしまい、残業計算をしてしまった場合、二重罰となりますので、これについて抵触しそうですね。労使双方が違反をするという状況が生まれてしまいます。
給与計算業務を担当なさっている方は、(レアケースかとは思いますが)ご注意ください。
- 不祥事事案の重大さを考慮した減給をできないのか?
このようにお考えになるのはごもっともです。例えば、従業員の不注意により社用車を全損した、顧客情報を大量に流出した、といったように会社に多大な損害を与えた場合です。どうすればよいのか?
- 減給以外に損害賠償請求という方法もある。
なお「損害賠償」として回収する場合は、、、
- 給与からは天引きしない
- 給与全額支払い後に指定振込先へ入金してもらう
といった手段をとることをおススメいたします。
- 振込がなかったらどうするのか?
身元保証人へ連絡する、それでもダメなら専門家(弁護士)へ相談し、場合(額)によっては裁判を起こすことになります。
なお、損害賠償請求をするにしても、従業員に全額負担させるのは難しいでしょう。なぜならば、事故が生じる原因が100%本人にあるのかが分からないためです。会社は教育を施していたのか?時間管理を徹底して健康面に配慮していたのか?裁判に発展した場合には、このあたりにも焦点があたり、チェックされることになります。
・・・なにか重い話になってまいりましたが、このようなことが生じないよう、日々の労務管理・教育訓練は怠らないようにしたいところですね。
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中小企業診断士 山下典明
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