皆様、こんにちは!
社会保険労務士法人ことのは
中小企業診断士の山下です。
さて、前回(「労災が発生!何をすればよいのか?」①)の続編です。
「人命第一」
- 応急処置、場合によっては救急車を呼ぶ!
- 病院にて手当を受ける。
- 労災であることを病院で告げる。
- 会社へ報告する。
- 労災発生時の状況を聴取する。
- 労災関係用紙を用意する。
- 医療機関や労基署へ労災関係用紙を提出する。
―ここから②- - 労災発生の要因を究明する。
- 同様な労災が発生しないよう対策を練る。
- 対策を実行する。
- 休業補償給付を請求する。
- 復職へ向けた準備をすすめる。
労災が発生、即座に対応すべきことを、前回記しました。
今回は、その後、どういったことをすべきかを記します。
8.労災発生の要因を究明する。
9.同様な労災が発生しないよう対策を練る!
10.対策を実行する。
労災が発生してしまったことを、「無かったことにすること」はできませんが、「無くして(減らして)いくこと」はできます。
以前、『人間は、一生涯で多くのミスをする。その「種類」は有限だが、その「回数」は人によって差がある。同じミスをしないことで、「回数」を極小にすることができる。』ということを、某経営者から教えていただきました。そのとおりだと思いました。
この「回数」を極小にすること、職場では「同じ労災が生じることを無くす(減らす)こと」に換言できるかと思います。
- なぜ発生したのか?
- どうすべきだったのか?
- 今後の予防策は?
労基署への単なる報告に留めるのではなく、社内勉強会で取り上げるなど、再発防止へ向けた「活動」へつなげるべきです。
なお、万が一、重大な事故が発生した場合には、労働基準監督官による「立ち入り検査」が実施されることがあります。例えば、「看板を取り外す際に脚立から落下、左膝・左踝を複雑骨折」「重機に挟まれて腰を骨折、全治6ヶ月」といったケースでは、「立ち入り検査」が実施されました。
その場合は、状況確認だけでなく、「今後どうしていきますか?」「対策は検討しましたか?」「報告書の提出をお願いします!」といった勧告を受けることになります。
報告書の提出が必要だから、、、ではなく、労災が生じたのであれば、報告に必要な事項を検討・実施するべきだと思います。
11.休業補償給付を請求する。
大きなケガを負った場合、長期休業が必要となる場合があります。この間、会社からの賃金はストップ、収入が途絶えることになります。よって、国からの補償、休業補償給付を受けることで、これを補うことになります。但し、そのためには国へ請求しなければなりません。
ダウンロード@厚生労働省
⇒ 様式第8号(休業補償給付支給請求書)
いろいろと書くことがあるのですが、、、まずは以下を用意しましょう。
○ 提出済みのモノの写し
- 様式第5号(療養補償給付たる療養の給付請求書)
- 様式第23号(労働者死傷病報告) ※提出していない場合は用意しましょう。
○ その他、必要となるもの
- 預金通帳(写し)
※ 給付金振込先となる金融機関
※ 金融機関名称、種別、名義、口座番号 - 賃金台帳(写し)
※ 直近3ヶ月分(被災日を含まない賃金計算期間のもの) - 出勤簿・タイムカード(写し)
※ 給付を請求する期間を含むモノ
様式第5号・23号を参考にすることで、かなりの箇所を転記で済ませることができます。その他、平均賃金の記載は、若干時間を要する作業となりますが、2回目以降は記載不要です。初回分を作成、労基署に受理されれば、次回以降は初回分を手元に書面作成ができるので、時間はさほどかかりません。
手続きが遅くなると、「給付が下りない!?」「会社は何をやっているんだ!?」と被災者が不満・不安を抱きます。手続きを迅速化、被災者の不安要素を可能なかぎり取り除ける体制を、構築しておきたいところです。
12.復職へ向けた準備をすすめる。
休業期間が長ければ長い程、「復職」への対処が難しくなります。というのも、従業員を補充した場合、要員過剰になる可能性があるからです。また、傷病に伴い、以前と同じような作業が困難となった場合も、対処が難しいです。職種や業務内容の変更、そして配置転換等だけでなく、給与水準をどうするのか、交渉が必要になるケースが多いです。
そのような場合を想定して、ある程度は「社内規程」にルールを定めておくことをおススメします。例えば、「復職時には、対象労働者の容体や医師助言を参考にして、配置転換をする場合がある」といった文言です。そして、労災を防止するための「教育・活動」を、会社としてどれだけ手を尽くしたか、このあたりも、いざという時に大切になってきます。
なお、短期間で「復職」できる場合は、以前と同じ作業をすることができ、前述ほど交渉が拗れることはないでしょう。しかし、短期間とはいえ、現場に穴を空けてしまったことに負い目を感じているかもしれません。「ドジな奴だ!」「全く迷惑な話だ!」ではなく、「明日は我が身」かもしれません。「現場でのフォローができていること」「再発しないための対策が練られていること」等、精神的フォローが自然とできる体制になっているか、確認してみましょう。
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